尖閣諸島の事件をめぐる議論はすごい盛り上がりを見せ、「日比谷焼き討ち事件」のころもかくやと思わせる。私も今回の政府の対応はまずかったと思うが、中国の強硬姿勢がかつてなく激越で、しかも矢継ぎ早だったのは政府も予想外だったのではないか。これは国内問題の「ガス抜き」という面もあろうが、世界に対して「アジアのルールはわれわれが作る」ということを示す意味もあったと思う。本書はイギリスのジャーナリストが書いたもので、タイトルはいささかセンセーショナルだが、内容はまじめなものだ。今回の事件との関連でおもしろいのは、中国が西洋世界の「法の支配」に挑戦しているという話だ。通説では、西洋が近代化によって中国を追い抜いたのは、財産権や契約などのガバナンスがしっかりしていいて市場や株式会社などの人的関係に依存しない組織ができたからで、中国も成熟すれば西洋化すると西洋人は考えているが、著者はこれに異を唱える。